雨に強いホウ素系薬剤?──その情報、鵜呑みにしていませんか?
木造建築の防腐防蟻対策として注目されている「ホウ素系薬剤」。近年はその安全性と持続性から、日本でも広く採用されるようになってきました。
特に、「非接地・非暴露」の条件で使用することを前提に日本国内で認定を受けています。
※非接地・非暴露の条件とは、地面に接しない、風雨にさらされない環境で使用することを前提という意味です
しかし最近、一部の製品において「雨に強い」「水に流されにくい」といった宣伝文句が目立つようになってきました。
これらは本当に正しい情報なのでしょうか?
ホウ素は水に溶けやすい──これは科学的な事実です
ホウ素系薬剤の主成分であるホウ酸やその誘導体(たとえばDOT=八ホウ酸二ナトリウム四水和物)は、水に溶けやすい性質を持っています。これは世界的に知られている化学的性質であり、だからこそ施工時には雨に濡れないよう徹底した養生が必要とされるのです。
たとえ製品形状や添加剤によって若干の耐水性が改善されたとしても、ホウ酸は根本的に「水溶性」であることに変わりはありません。「雨に強い」「溶けにくい」という断定的な表現は、誤解を招くリスクがあります。
認定制度の趣旨を踏まえた情報発信を
現在、日本国内で認定されているホウ素系薬剤はいずれも「非接地・非暴露」の条件を前提に評価されており、これはホウ酸の性質を正しく理解した上での制度設計です。
よって「屋外でも流出しない」などの主張は、認定制度そのものの信頼性を損なう恐れがあります。
エピソード:信じて使った結果…
実際に、他社ホウ酸業者の施工物件の床下で、ホウ酸の付着度チェックを依頼され確認したところ、ホウ酸の付着量が著しく低下していた物件がありました。
施主にとっては「薬剤を処理したのに意味がなかった」という結果になり、やむを得ずへ弊社にて再処理を行うことになった物件があります。
「雨に強いから特別な養生は不要」と業者から説明されていたそうです。
このように、根拠の乏しい宣伝文句を鵜呑みにすると、最終的な責任を負うのは施工者や施主となってしまいます。
正しい情報、正しい施工、雨養生が、家を守る
防腐防蟻処理を検討している施主や設計者にとって、施工の安全性と効果の持続性は極めて重要です。
業界全体としても、「科学的事実に基づいた表現」を守ることが、信頼を得る第一歩になります。
雨に濡れても問題ないとされる薬剤があると聞いたときこそ、少し立ち止まって、科学と制度の原点に立ち返る必要があります。
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