日本ボレイト犀川泰光 プロフィール

2025/03/02

日本におけるシロアリ被害の現状と持続的対策 第三話


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3. ホウ酸処理の有効性とメリット

3-1. 安定性と長期効果

世界の防腐・防蟻技術においては、「シロアリを寄せつけず、腐朽を起こさない」方法として、ホウ酸という薬剤を用いた処理が確立されています。

水に溶かしたホウ酸水溶液を木材内部に浸透させると、揮発性がないため木材の内部に留まり続け、防蟻・防腐効果が長期間にわたって持続することが化学的に説明されています。
つまり、木造住宅が取り壊されるまでの100年でも200年でも、木材を劣化させずに保護し続けることが可能というわけです。
さらに、従来の化学薬剤のように定期的な再散布が不要なため、長期的なコストパフォーマンスに優れている点も世界的に認められています。

3-2. 安全性と環境負荷の低減

ホウ酸を木材に含浸させるこの技術は、木材を食害するシロアリなどの昆虫に対して有効な毒性を示す一方、ホウ酸自体に揮発性がないため、そこで生活をする人間や胎児、幼児、ペットなどの哺乳類や鳥類に対しては安全性が高いのが大きな特徴で、まさに理想的な薬剤と言われています。
さらには、日本でシロアリ事業者に使用されてきた農薬系の殺虫剤と比べ、環境負荷を抑えられる点も大きなメリットとなっています。

3-3. 外来種を含む幅広いシロアリへの効果

ホウ酸はシロアリ全般に対して予防効果を発揮します。アメリカカンザイシロアリのように乾燥した小屋裏の木材でも侵す外来種にも有効です。
外来種の被害が拡大するなかで、長期的な効果と安心安全の両面を備えたホウ酸による防腐・防蟻技術の需要は、今後さらに高まることが確実視されています。


おわりに

日本の木造住宅では従来、短期的な農薬系の殺虫剤の散布を中心とするシロアリ対策が行われてきました。
しかし、この方法では住宅の長寿命化や資産価値の維持に十分寄与しているとは言い難く、さらに気候変動や高気密化の進展によってシロアリ被害のリスクが増大、加えて、外来種であるアメリカカンザイシロアリが侵入・定着し、被害範囲を広げている点も深刻な課題です。

こうした状況下、長期的かつ安定的に防蟻効果をもたらし、環境や健康へのリスクが低いとされるホウ酸処理は、日本の住宅事情に適した持続的な対策として大いに注目されています。

今後は、従来の農薬系殺虫剤を散布するだけの対処から脱却し、世界でも確立されているホウ酸処理技術を普及・定着させることで、木造住宅の耐久性向上資産価値の維持、さらに安心で安全な住環境の整備へとつなげることが求められます。

シロアリ対策の方法を見直し、長期的視野に立った防腐・防蟻技術を選択することこそが、これからの日本の住宅と暮らしを守るうえで欠かせない取り組みです。
建築業界の専門家や関連する皆様には、その重要性を広く認識し、積極的に実践・啓発していくことを強く期待します。



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